ひとつで

目が覚めて

いつも通りの手順で朝をつくりながら

誰かはため息をつく

 

誰のためでも

誰のものでもないのなら

これはすごく味気がないのに

味見しながら手を動かすと

心の中はあがったりさがったり

 

何かを待っている

何かを

期待することは

大概自分の世界でつくりあげた言葉

だからそれは誰も話すことができない

なのに独りきりなのを

受け入れることもできない

それにも気づかないで

波音が大きくなって

心許ない抜け殻は転がる

 

ふと窓の外を見ると

ベランダのブルーベリーが

白い花を咲かせている

ああそうかとは思えない

習うことも

慣れることも

 

手を止めて

外に出る

スズランのような白い花は

もう少ししたらコロンと土に落ちる

そして

 

このようなもの

すべてのことは

誰のためでもなく

自分のためでもなく

時間と大気

細胞のリズムが重なり合っているだけ

 

ただそれだけ

耳を覚ますと

波音は遠のき

微かに

確かにそれを聴くことができる

鳴り止まない

忘れられた

忘れることはできないもの

 

部屋に戻ると

私は

わたしを手放して

そしてそのまま

 

そのままのリズムで

進もうとしている

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