ここには
川がいくつも流れていたらしい
雨が降って集まって
それはいつしかやっと
足首までの深さになった
ここに道があると気づいた朝に
静かになったのを見計らって
冷たい流れに足を浸してみた
やっと溜まったのに
もう先を目指して流れていってしまう
光を反射して
キラキラと輝くのも今だけだって
言うみたいに
あっという間に過ぎ去っていく
こんなことも
あんなこともあったのか
知らないことをたくさん教えながら
知っていたことも
見落としていたことも
意識的に見ないようにしていたことも
もう一度身体の隙間を満たしては
すり抜けていく
こんなにも簡単なことだったのか
冷たさにハッとするように
塗り替えられて
擦り落とされた
何もない場所が必要なんだ
ほんの少し
川は消えることはないから
堰き止めずに
少しだけ空けておこう
忘れないように
雨が降って溢れないように
行くべきところへ向かえるように
そしてまた
時間のちぎれた光が集まって
反射して映し出される姿を
もう一度思い出せるように