reeds

はっとして

戻らなくちゃって思う時がある。

よそ見してずいぶん離れたところに来ていた時

ふと、小さな写真の片隅に

よく知っている人が写っているのを

見つける。

よく知っている…そういうつもりだったんだけど

でも中途半端なまま、

いろんな飛び石をジャンプして

川底で光ってる黒曜石を拾い上げて

そこに反射してる太陽の僅かな断片が眩しいのにとりつかれてる。

そしたらその人のことは

本当はまだあんまり知らないのかもしれない。

説明することがなに一つできないから。

日が暮れて、その石は太陽から見放されて

初めの頃の姿に戻る

僕は川の中腹で途方に暮れみたいに

両手をぶらんとさせて立っている。

あの石は手から滑り落ちて川底へと帰って行った。

いやもしかしたら

まだ手の中にいるのかもしれないけれど

持っていたかったのは

あるいは見ていたかったのは

光の断片だけだったんだ。

振り返って渡ってきたはじめの岸をみると

薄暗い木々の隙間で

懐かしい人が佇んでいる

あの悲しそうな顔に気付いているのが

自分だけだったらいいのに

ならなぜ、こっちへ渡ろうとしてる?

さあね

いくつもの光が点滅するんだ

それは日が沈んだらいつも消えてしまう

戻らなくちゃ

目を閉じて冷たい水の中辿った道を戻る

今度は知ることができるだろうか

本当はあれが誰なのかってこと。