思い出す 蓋をする

今年ももう半分ほど過ぎてしまった

 

起こったこと

これから起こること

まだまだ整理がついていない

 

育った家の取り壊し

それから夢の国へ行った事

ふわっと現れ続ける病気

世界のこと

 

ひとつひとつ

辿ってみようと

立ち止まってみるけれど

 

どれもこれも辿るにはまだ

本当の大きさも形も朧げ

 

ただ泣けてくるとか

ただ切なくなるとか

ただ愛おしくなるとか

ただ力が抜けるとか

なんとなく

たったそれだけで

私はそれらから少し離れようとする

 

いろんなことが

そんな感じに掬い取られるようになった

 

それを集めた桶の中で

できるならゆっくり目を閉じて

全身を浸していたい

 

そうすれば頑なな

そっけない身体から

じわじわと小さなものたちが染み込んできて

 

本当の形に気づけるのかもしれない

 

でもその桶には

蓋がしてあって

 

私はその上を飛んでいく

 

小さく伸ばされた手が

小さな瞳がこちらを向く限り

 

どこへでも

空っぽのまま

なにも分からないまま飛んでいく

 

強くなったわけでも

弱くなったわけでもなく

 

ただそれだけのこと

そういうふうになっているだけのこと

 

 

でもときどき

 

躓いて転んでばかりの時

覗き込んでみたくなる

 

みんなそうだったのかな?

ずっと昔からそうやって

存在も喪失も繰り返されて

そこにないように見えても

見えないだけで積み重ねられているのかな

 

憶えている限り

誰かが憶えている限り

 

諦めも

受容も

 

草木のように

土の層のように

 

きっとみんなそうだったの?

 

私だけじゃないよね

 

きっと

 

思い出す

 

どこかで

 

ずっとあとに

 

ずっと前に

 

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秋のどこか

 

空に夏の終わりの雲がでていた

あっという間のような
長かったような夏

季節がなんだかあってないような
曖昧に思えた
暑い日々

何があったかなあ

頭の中のほとんどは
去年の冬にうまれた子のことばかり

自分を通して見ることが
すごく減った気がする

小さい子の分からない
儚い不確かな姿を通して

全部に意味があって
全部に意味はなくて
細部に捉えきれない大きなものの中に

立っているところは
とても曖昧だと
疑ってみたりする

日々すり抜けていくような
覚えていたいことも
目に焼き付けたと思ったことも

朝の涼しくなった風の中では
なんだかもう
遠くのことみたいに感じる

どこかに残っているのだろうか

分からないままにしていたことは
いつか目の前に現れて
また悩んだりするのだろうか

こんなにも
無責任に
滑稽に
軽やかに

次へ次へと

はっとしたときには
何も見えなくなっているかもしれない

空を切るように
雲を掴むように

それでもいい
それでもいいよ

きっときっとね

まだ秋はこれから始まる?
それとももう終わりに差し掛かってる?

小さい子
あなたはそのどこかの流れに
ゆったりと身をまかせて

なにも心配せずに

秋などまだ知らずに

でもここはいいところだよ
こんな日はきっといいよ

そう云いながら

どこでもないところに
たって
また歩いて

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夏のまんなか

先日、近所で花火大会があったので
花火の見える川沿いまで
少しだけ歩いて行ってみた。

生後8ヶ月の娘にはまだ早いかなあ
音にびっくりしちゃうかなあと思いつつ
泣いたらすぐに帰ろうと連れていったら
意外にも音には驚かなくて。

日中は日差しが強くて出かけられないから
久々のお散歩が嬉しいのか
ずっと身体を揺らして喜んでいた。

花火を見ても
どんな感情が芽生えているのかは
あまり変わらない表情からは
分からない
でも確かに
瞳には火花が飛び散るのが映っていた。

経験や記憶と結びつける事が
まだできない花火は
一体どんなものなんだろう。

ピカピカした光
飛び散るカラフル

きっとこれから
その美しさと楽しさと懐かしさと
寂しさを作っていくんだろうな。

まだ何にでもなれる
あなたの中ではきっと
どんなものでも。

それが少しでもきらきらと光り続けてくれる
そういうものになるように
お手伝いができたら良いなあ。
なんて思った。





花火の音を聞くと
私はなんだか嬉しさと共に
胸がぎゅっとなる。

小さい頃、祖母の家のベランダから
毎年夏休みにいとこ達と花火を見た。
お祭りのやっている大きな公園まで行って
人混みの中、屋台を楽しんだ。

花火の見えるベランダは
ざらしでホコリをたくさん被っていて
私たちの足は終わる頃には真っ黒だった

みんなで布団を敷いて
遅くまでおしゃべりしながら寝入った
二階の大部屋。

本当に昔の日本家屋で、
あちこちがほんの少し暗くて
恐ろしさも含んだ静けさがあって
今でも時々夢に見る祖母の家。

でももう十年以上前に取り壊されて
大人になって訪れたそこは
綺麗な住宅が建ち並んでいた。



かぼちゃのお味噌汁を作って待っていてくれた
祖母のいた台所
優しい曽祖父が眠っていた
一番突き当たりの部屋
大きなソファをアスレチックにして
みんなで飛び回った応接間
庭の夏野菜
犬たち、猫たち。

いろんなことが
いつのまにか
遠くへ行ってしまうのだと
その時に痛みと一緒に悟った。

あれから
本当に
本当に
沢山のことが遠くへといってしまった。

いつか
腕の中で
まだなにも知らないまま
花火を見ていた娘も

こんな事を思ったりするのかな。

でも
きっと大丈夫だよ、と言いたい。

あの音が心臓を叩いて
花火の光が飛び散った時
私は祖母の家へあっという間に
舞い戻って
そして小さい頃のように笑っていた。

まだそこにいるんだ
そう感じられた。

そして、同時に
ここへ来るまでに
一緒にいてくれる人や
たくさん出会ってきた人やものたちを思い出した。

夏のまんなか

何を見ても
何をしても
思い出ばかり



でもきっと今この瞬間も。

だからもう少し

ここで一緒に空を見上げていよう。

なつのまえ

暑くなってきた

部屋の中で

ようやく眠った小さい子と

横並びに寝転がってひと息

抱っこしてと

くっついてきた肌が

温かくて湿っている

エアコン、我慢せずにつけてあげなくちゃ

 

春、大好きな春、

短かったなあ

でも

だからこそじっと見ることができた

気づいたこと

沢山あって

同じくらい

それを忘れてしまった

 

残っているのは

今だけに思える

それと待ったなしの未来

あわただしいなあ

 

みんなもそう?

そう感じていたりする?

窓の外

緑に聞いてみたい

イチゴの苗が

つい先日まで爽やかな風で

そよいでいたのに

もうくったりとしている

 

その次

毎日生きなくちゃね

 

小さい子

まだまだ小さいけど

おおきくなったね

 

いつの間に

目が合うと笑ってくれるようになったの

 

手を伸ばしてきたり

駄々をこねるように

パシパシ叩いてきたり

横向いたりうつ伏せになったり

お粥なんて食べられるようになったり

 

いつの間に

二人で一人みたいだったのに

一人だと気づいたの

 

私は急かされながら

止まっているみたいなのに

生きることは

寂しくて美しいと

いつも教えてくれる

 

だから

生きることは

ただ生きるだけで十分だと

 

瞳に木漏れ日が映っている

初めての光が映っている

それはあなたにはまだ

ただそれだけ

でも宇宙を見るようで

うらやましい

 

次をみるとき

私には何が映っているのかな

今を捉えるのも難しい

 

なつのまえ

その前にまだ終わりかけの

過ぎ去ろうとする春

忘れてしまったそのまえ

 

ひとつひとつ

あせらないあせらない

 

時々瞬きして

シャッターを切るように

 

もうすこし

じっと見つめていたい

 

 

 

はる

暖かくなってきた。

夜、

カーテンの隙間からはいってくる

震えるような冷気を感じなくなった

天気のいい日は

散歩ですこし汗をかく

 

最近

どこにいても

心配になったり

不安になったり

迷ったりする

 

ときどき、

最悪のことを考えたりして

その時は消えちゃおうなんて

最悪の方法で自分を慰めようとしたりする

 

暖かい日が差し込む

カーテンの隙間

 

音を立てないようにそっと広げて

部屋の中が大きく深呼吸するみたいに

ゆっくりと色づくとき

 

私も一緒に深呼吸をする

 

一人きりで

始まりかけのはるを歩くとき

 

心配も不安も迷いも

自分の足音の後ろから

確かについてくるのが分かる

 

そこにいるのが分かる

 

でもこの瞬間の景色が

前から飛び込んでくるとき 

なんでもない一瞬一瞬

ときどき光ったりする一瞬

そしてそれが通り過ぎていくとき

 

今、

今、

今このときだ

 

そのとき

そのときを生きるしかないんだ

そうも思える

 

そう思うしかない

 

もうすぐだね

楽しみならいくつあってもいい

でもそうじゃないなら

 

いまこのときをもっとよく

みていよう

 

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のんびり

のんびりしたいなあ

のんびりするひとときに、きっと

 

いろんなことを思い出して

今この瞬間に辿り着いて

そしてその先を想像したりする

 

思い返して思い描いてみる

 

大切な人に

こうしてあげたいああしてあげたい

 

自分自身が

こうしたいああしたい

 

深呼吸してからじゃないと

やっぱりドタバタの音の方が大きいような

 

もっと瞳がキラキラするような

そんな瞬間を見せてあげたい

 

理想ばかりで

現実はその日その日の最低限のこと

安全に安心にそれだけ

 

それだけでいいのかもしれないけど

もっと本当はたくさん

まだ触れられていない場所

 

ささやかでも

大切な星たちの隙間と隙間

生まれるものがある気がするんだ

 

ゆっくりひとつづつ

手を伸ばしていこう

 

のんびりするひとときに

目を凝らしてみる

無理しない焦らない

でも忘れないように


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