
夜

スダジイの実を拾ってきた。
小さい頃、父と食べた記憶。
朝

朝、ベランダのきゅうりを2本収穫した。
秋の風がひんやりとして
きゅうりたちも
その冷たさを受け取っているような
やっと一息つけるねと

思い出す 蓋をする
今年ももう半分ほど過ぎてしまった
起こったこと
これから起こること
まだまだ整理がついていない
育った家の取り壊し
それから夢の国へ行った事
ふわっと現れ続ける病気
世界のこと
ひとつひとつ
辿ってみようと
立ち止まってみるけれど
どれもこれも辿るにはまだ
本当の大きさも形も朧げ
ただ泣けてくるとか
ただ切なくなるとか
ただ愛おしくなるとか
ただ力が抜けるとか
なんとなく
たったそれだけで
私はそれらから少し離れようとする
いろんなことが
そんな感じに掬い取られるようになった
それを集めた桶の中で
できるならゆっくり目を閉じて
全身を浸していたい
そうすれば頑なな
そっけない身体から
じわじわと小さなものたちが染み込んできて
本当の形に気づけるのかもしれない
でもその桶には
今
蓋がしてあって
私はその上を飛んでいく
小さく伸ばされた手が
小さな瞳がこちらを向く限り
どこへでも
空っぽのまま
なにも分からないまま飛んでいく
強くなったわけでも
弱くなったわけでもなく
ただそれだけのこと
そういうふうになっているだけのこと
でもときどき
躓いて転んでばかりの時
覗き込んでみたくなる
みんなそうだったのかな?
ずっと昔からそうやって
存在も喪失も繰り返されて
そこにないように見えても
見えないだけで積み重ねられているのかな
憶えている限り
誰かが憶えている限り
諦めも
受容も
草木のように
土の層のように
きっとみんなそうだったの?
私だけじゃないよね
きっと
思い出す
どこかで
ずっとあとに
ずっと前に

またゆっくり
少しだけあいてしまったけれど
またゆっくり
日々のことかいてみます。

秋のどこか
空に夏の終わりの雲がでていた
あっという間のような
長かったような夏
季節がなんだかあってないような
曖昧に思えた
暑い日々
何があったかなあ
頭の中のほとんどは
去年の冬にうまれた子のことばかり
自分を通して見ることが
すごく減った気がする
小さい子の分からない
儚い不確かな姿を通して
全部に意味があって
全部に意味はなくて
細部に捉えきれない大きなものの中に
立っているところは
とても曖昧だと
疑ってみたりする
日々すり抜けていくような
覚えていたいことも
目に焼き付けたと思ったことも
朝の涼しくなった風の中では
なんだかもう
遠くのことみたいに感じる
どこかに残っているのだろうか
分からないままにしていたことは
いつか目の前に現れて
また悩んだりするのだろうか
こんなにも
無責任に
滑稽に
軽やかに
次へ次へと
はっとしたときには
何も見えなくなっているかもしれない
空を切るように
雲を掴むように
それでもいい
それでもいいよ
きっときっとね
まだ秋はこれから始まる?
それとももう終わりに差し掛かってる?
小さい子
あなたはそのどこかの流れに
ゆったりと身をまかせて
なにも心配せずに
秋などまだ知らずに
でもここはいいところだよ
こんな日はきっといいよ
そう云いながら
どこでもないところに
たって
また歩いて

