もしもふたりが

 

 

 

ハロルドとヤンは

アメリカの小さな田舎町に生まれた

大体同じ年に。

 

家は2ブロック離れたところにそれぞれあって

同じような貧しい農家で育ち

 

働ける歳になっても

大恐慌で収入のある仕事に就くのは難しかった

 

だから二人にとって

1日1ドルはあまりに魅力的だったに違いない

 

そして1943年

州兵訓練施設で二人は出会ったそう

 

除隊後は養鶏場を買い取るとか

できれば貯めた金で街へ出たいとか

 

雑談はそこそこに

 

気づけば船の上。

 

いろんな思いが波で揺られて

気分が悪くなりそうな中

 

自分たちの任務を知った

 

作戦を反芻

 

下船したらとにかく浜から離れる

 

これは絶対だった。

 

船が汽笛を鳴らして減速する

A中隊のみんなは落ち着いているように見えた

 

25kgを超す背嚢と海水に足を取られながら

浜辺へと進んで行く

 

あたりは静まり返って

何も起こらないような

いやそんなはずはない、

 

ハロルドは

目を凝らし

ヤンが

もう一歩を踏み出そうとしたとき

 

それは始まって

 

そしてまもなく終わった。

 

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その浜には

対戦車用の大砲が向けられていて

たくさんの機雷

跳ねっ返りベティと呼ばれた

空中で炸裂し無数の金属片を撒き散らす

対人地雷

MG42が電鋸のような音を響かせていたそう

 

A中隊は上陸を先導した部隊で

しかし上陸後ものの5分ほどで

約92%が亡くなりました。

 

その中の

田舎町ベトフォードから出征した35名のうち

20名が上陸当日、

74年前の今日  6月6日に戦死。

 

この作戦に15万人の連合国軍兵士が投入された

対するドイツ軍兵士は4万人

 

連合国は長期にわたる綿密な計画や

技術を駆使した偵察、

制空権をも持っていたけれど

 

とにかく沢山送り込めば

誰かが突破してくれるだろうともいえる

あまりにも酷い現実に直面した兵士達もいた

 

「上陸する直前、気づいたのです

   わたしたちは捨て駒なんだって」

 

 

今日はノルマンディー上陸作戦の日でした。

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6/6はノルマンディー上陸作戦があった日、

…だから何って言えばそれまでなんだけど…

 

フランスで

「D-Day Festival 74th Anniversary!」

みたいなイベントが5月下旬から6月初旬まで

開かれてるらしくて

楽しそうな写真を見せてもらった、

 

不思議だと思って。

出来事はいろんな側面から見ることができて

ある方向から見れば悲惨な事実だけど

別の方向からは成功だったり

勇敢で讃えられるべきことだったり

それは360度無数にあるから。

 

どこに立ってそれを見るか

どう捉えるかは

何にでも言えるけど自由で

 

しんみりするのか盛り上がるのか

そういうのは事実と時間が離れるほど

いろんな理由が付加されて

大したことじゃないんだと思う。

 

…それでとにかく

そういうイベントがやってるみたい。

 

僕が立っているところからは

なんだか不思議にみえたけど

きっと視野が狭いんだと思う、

だからもう一回 あの日がなんだったのか

ちょうど本を読み返してた。

 

いつも感心があったのは、初期の部隊が上陸した際の

悲惨すぎる結果で

でも何か考えるためには

立ち位置を変えて 捉えきれてない全体像を

もっとずっと深く知る必要があった

当たり前だけど…

 

今の時点での中途半端な感覚は

どこかに

しまっておくのがいい気がします。

 

ただ絵を描くために

架空の二人が何を見たのか、

どんな経験をしたのか

辿って行くのは 

言いようもないくらいすごく気分が悪かった

 

なんだか本当に苦しくて嫌になった

 

 

 

 

 

おわり

 

 

 

 

 

 

 

参考にしたもの

・欧州戦史シリーズ,Vol.8(1999),ノルマンディー上陸作戦

・Scott Chantler (2010),TWO GENERALS

パウル・カレル(1998),彼らは来た

・GA 48(1998), ノルマンディー連合国の苦闘

・リチャード・ホームズ(2009),The D-DAY Experiences

(↑精巧なレプリカが多数同封されていて資料としてとても素晴らしい本でした)

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(↓入っていたレプリカのラインナップ)

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