夕方
仕事で少し外を歩かないといけなくて
祝日でみんな遠くに行っちゃって人の少ない道
ビルの向こう側の空がだんだん赤くなって
それから暗くなるのを見てた
ひと段落ついたけど
帰りたくなかったから
その空が見える方に少し行ってみようと思った
イヤホンから
命を絶ってしまった大好きなあの人が
「僕は完璧な人間じゃないけど
この人生を愛してるんだ」
そう歌ってる
自分は今
間違いなく幸せなんだと思う
シャクナゲがあんなに綺麗なのを
今年初めてみた
いつも写真なんか撮らないのに
今日はそんな気分になった
信号待ちしてた時
向かいの道にいた小さな子が
飼い犬のおすわりを
僕に得意げに披露した
すごいねって
あほみたいなジェスチャーでこたえる
もう少ししたら
真っ暗になる
きりをつけて引き返す
影が先に歩いていく
歩道橋の突き当たりが
なんとなく恐ろしく見えた
「この計画は自分には無理なんじゃないかって思う。
ちゃんと理解するために、離れることも必要なんだ」
君はまだ歌ってくれてる
自分が切なくて
感傷的になってきてるのが分かる
だけど
彼の歌に自分の人生を重ねて悲しくなるほどの
そんな人生を送ってるわけでもないんだ
だからなんかへんだよね
こんな
雑な感覚でできたような
1日もあるんだな
泣きたくもなるのに
しらけてもいる
何でもないのに
何かが変化している感じがする
なのに明日には全部忘れちゃうって知っている
イヤホンを外して
「戻りました」
窮屈な制服に着替えて
パソコンをつける
後数時間
さっきまでの感覚を頭から締め出して
やり過ごそうとしてる
.
.