記憶の
風や、草木、砂、海
それらは一人の人間の営みより
ずっと長い間を生きる
そのものたちは
私たちを記憶していると聞いた
100年前の私たち
10年前の
昨日の
今この瞬間の
ここで誰が歌って
愛を語って
憎しみあって
生きて
死んでいったのか
彼らは一つ残らず
全部覚えているんだ
浜辺に打ち寄せる波音
背の高い草原の中を
風が駆け抜ける音
地面を踏みしめる音
それは
私たちのことを話している声だって
あの人はそう言った
ずっと昔の記憶を語ってる
それは驚くほど鮮明
だから
誰かを惜しむ時
懐かしい人を思うとき
思い出すことのできない
思い出を探すとき
木陰の、
あるいは
浜辺、雨の中
そこに佇んだ時
目を閉じて
大切な人の記憶を語る
彼らの声を聞くことができる
その時再び
あの人が彼方からやってくる
そう聞いた