時刻

引き潮で出来た干潟を端から端へと歩いた。

 

いっぱいまで広がったその道は、

あとはもう

ゆっくりと閉じていくだけ。

 

それで最後には、何もなかったように

全部海の底に沈んでしまう。

 

足跡も、あらゆる光景も。

 

真っ白な流砂が指の隙間からじわりと入り込む

それをしっかりと掴むようにして歩く

 

覚え込ませるように、お互いを。

 

みんな意味のない事を繰り返している。

結末の分かっている物語の真ん中で

もがいている。

もがいてるふりをしてる。

 

でも他に術を知らない。

 

唯一はこれを全部

頭から締め出してしまう事。

空っぽにしてその道を行く。

 

歩いているそばから、何もかも忘れてしまえるように。

 

そうすれば、何も起こらなかったことになる。

 

始まりの時刻も、

意味のない真ん中も

変えることの出来ない結末も

 

何もないはず。

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