ルウの肖像 あとがき

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この度は、本を手に取ってくださり

本当にありがとうございました。

初めてつくった本でした。

至らないところが多々ありますが、描きたいことを詰め込んだので立ち止まっていただけた事、すごく嬉しかったです。

 

 

少しだけあとがきです ↓

「ルウの肖像」を

個人のつくったアルバムみたいにしようと思った時に

 

アルバムってどんなものだっけ

そうふと思いました。

 

ある時代を遡ったりした時に、

本やネットで

目に飛び込んでくる写真たちの多くは

例えば戦時中だと

報道記者やコンバットカメラ たちが撮ったものがほとんど。

この多くは、テーマ(残虐さや、悲しみ、英雄、希望)をもとにシャッターを切られているから

伝わってくるものがある程度の重みを持っているんだと思います。

 

だけど、

戦時中を同じように捉えた一兵士の作ったアルバムを一年ほど前何冊か取り寄せた時に

歴史上に残された写真とのギャップ、というか温度差を不思議に感じました。

兵士たち、ある一人の当事者だった彼らの撮った写真はもっと曖昧なものだったから。

アルバムをパラパラと見ても

その背景にある、後付けされた歴史は読み取る事が難しい。

手ブレした写真、友達、家族、大事なもの、目に入ったもの、心に残ったもの、忘れたいもの、忘れたくないもの…

これらはランダムに散りばめられていて

その中に思想やテーマはほとんど垣間見ない。

伝わる感情も曖昧なことさえある。

 

唯一、そのアルバムの言葉を読むことができ、

そこに残されたちらちらと光る空気をかき集め、再体験することができるのは

それらの写真を撮った当事者だけ。

これが誰かの記憶なんだって、そう思いました。

 

一人の人間のちっぽけさと

人生が個人的なものだという事、

彼らは広大な濁流の中にいることにさえ気付かず

ただ立っていたんだと感じさせてくれる

それがすごく興味深いです。

 

ルウの肖像は、そうできたらいいと思いました。

だから彼の写真や話は唐突で、中途半端で、畳み掛けるように脈絡がない気がする。

そこから伝わってくるものは少ない、あるいはないのかもしれません…

 

作るために、

ぼんやりとモチーフにしたい部隊とか、できごととかを調べていくと

なんだかきりがなくて、というより知らない事が多過ぎて

アルバムそっちのけで次々に目の当たりにする

歴史上のこれまで考えたことのなかった人たちにのめり込んでいたような気がする。

だけど、アルバムにはその殆どを描きませんでした。

ほんの少し浅く触れるくらいだったかな…

描けたらもうすこし理解できる本になったのかもしれないけど、

これはルウのアルバムだったから…

彼はあるいくつもの平行世界、折り重なった歴史のどこかに立ってた人で

彼は自分の立っている場所でファインダーをのぞいてただけだから。

鬱蒼と生い茂る木の向こうで起こっている出来事を知る由もなかったろうと思って。

 

でも自分自身は、

ルウのお陰で知りたい事が見つかり過ぎてしまったので

彼を取り巻いていた同じ世界のどこかにいた人達にまだ思いを馳せています。

もし同じように、散りばめたキーワードに興味を持ってくださる方がいたら嬉しいです…

 

写真、というある瞬間を静止させ切り取られた記憶の断片の外は

止まる事なくずっと動き続けていること。

ファインダーに現れては消えていくように見える

無数の人々もそれぞれが人生の個人的なアルバムを死ぬまで作り続けている事。

そして何より、記憶は時間が経つ事で変容していくという事実。

物語の形へ。

語れないものは時に忘却、脚色され

語りたいものは誇張され

事象のその後を生きる為に、それは必要不可欠なんだと思います。

 

自分の人生以外を本当の意味で生きること、

理解することは出来ず

想いを馳せる以外に知る術がない不思議な寂しさがいつもどこかにあります。

だからずっと考えてしまうんだろうな。

 

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素敵な本にもたくさん出会ったので、紹介したいです。

また、少しずつ インプットのために描き溜めてあったスケッチとか、参考にさせていただいたりインスピレーションになった文献なども追記していきたいと思います。↓

 

 

 

➀« Malgré-nous »

(マノンとクロードに関するもの(クロードはドイツ軍に徴集される前後、クラウスと名前を変えられています。戦後はあるきっかけでマノンの元へ戻るのを辞めており、本当の名前は生涯取り戻していません))

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戦時下のアルザス・ロレーヌ (文庫クセジュ)

戦時下のアルザス・ロレーヌ (文庫クセジュ)

 

↑最もお世話になった本です。

 

 

アルザスの言語戦争

アルザスの言語戦争

 

 

 

 

アルザスのユダヤ人

アルザスのユダヤ人

 

 

 

Die Reise des Marcel Grob

Die Reise des Marcel Grob

 

↑美しい色彩で描かれた素晴らしいバンドデシネです。ドイツ語だったので、翻訳機を頼りに少しずつ読み進めたものですが、主人公マルセルの運命はあんまりにも切なく、本当にこのような道を辿った人々がいるなんて信じたくないと思ってしまうほどでした。

 

https://www.malgre-nous.eu/

 

https://fr.m.wikipedia.org/wiki/Malgr%C3%A9-nous

 

 

②ヒュルトゲンの森

ミシシッピ州のキャンプシェルビー

(本書にでてくるロドスゲート訓練所は架空のものですが、シェルビーはミシシッピ州に実在するキャンプです。第二次大戦当時、太平洋戦争が始まったことにより、当時アメリカに住んでいた日系人は迫害され収容施設に押し込められていました。その時に、差別を受けながらも志願兵として米軍で戦った日系人の部隊が訓練していた場所でもあります)

④第9歩兵師団

⑤第442連隊戦闘団

⑥オラドゥール=シュル=グラヌ

(マルグレヌの人々も動員されたフランスの虐殺)

⑦マルザボット

 

 

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バルジの戦い (1980年) (ライフ第二次世界大戦史)

バルジの戦い (1980年) (ライフ第二次世界大戦史)

 

 

 

バルジの戦い〈上巻〉

バルジの戦い〈上巻〉

 

↑現在は絶版になっていますが、バルジの戦いについて一番詳しい書籍です。

 

プライベート・ソルジャー [DVD]

プライベート・ソルジャー [DVD]

 

 ミシシッピ州 にあった軍隊訓練キャンプシェルビーに駐屯していた日系アメリカ人部隊と、第9歩兵師団について↓

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC442%E9%80%A3%E9%9A%8A%E6%88%A6%E9%97%98%E5%9B%A3

https://en.m.wikipedia.org/wiki/9th_Infantry_Division_(United_States)

 

 

 

⑧1945年4月 ルウが載せなかった写真について

1945年4月に、ドイツ ノルトハウゼンにあったナチス強制収容所ミッテルバウ=ドーラが米軍により解放されました。

この場所では6万人を超える人々が労働を強いられ、そのうちの2万人以上が亡くなり、米軍は発見当時1千人以上の遺体を目の当たりにしたそうです。

解放時、この収容所に残っている生存者は少数でした。多くの囚人はドイツ北部のベルゲン=ベルゼンに移動させられていたからです。恐ろしい条件下での死の行進でさらに数千人が殺されていました。

 

ルウは収容所が発見された4月にノルトハウゼンにいましたが、解放に携わった部隊には属していません。進軍中に、噂などを聞いてはいたと思いますが、なぜ写真を持っていたのでしょうか。

彼は生前、その話を一度もする事はありませんでした。

https://en.m.wikipedia.org/wiki/Mittelbau-Dora_concentration_camp

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⑨1980〜1990年代 ファイアーアイランド

    愛

    普遍的なもの  境界線のない全て

    エイズ

     死

(1980年から1990年、世界中で爆発的に感染拡大したエイズで亡くなったルウの親友トマスについては、ほんの少しだけ触れましたが、その際に読んだ本やスケッチの一部です↓)

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Fire Island Pines: Polaroids 1978-1983

Fire Island Pines: Polaroids 1978-1983

 

 

 

ジョゼフとその恋人 (Hayakawa Novels)

ジョゼフとその恋人 (Hayakawa Novels)

 

↑読んだのはもう何年も前ですが、思い出すたびに温かさと悲しさの波が今でも押し寄せてくる本です。作者クリストファーデイヴィスの書く物語はおとぎ話のような優しさがどこかにある気がする。書かれた時代も関係あるのでしょうか…

 

 

 

The Ward

The Ward

 

 

 

 

まだまだ、補足したいのですが

長くなりそうなのでひとまずこの辺りで、

また追加していきますので

もしご興味がありましたら、覗いていただけると嬉しいです。

 

この度は、本当にありがとうございました。

 

 

 

おまけとしてつけていた漫画

I Found It

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おわり

 

 

関連記事(実際に買った3冊のアルバムについて)

 

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