オデッセイ

帰り道

道路が凍ってて

冷やされた空気が

暗闇の突き当たりに集まってた

その黒く凍りついた

ブラックホールみたいな空間

 

あの先にまだ二人はいるのだろうか  

 

あの人に電話をする

 

オーバーバイエルンの小さな村

何年振りか

騒がしい酒場の音

だけど

その人の声は丁寧に切り取られて

まるで違う惑星から届く手紙みたいに

 

彼はよく思い出せない

なにもかも覚えていたはずだったのに

 

言いたいことは

お互い随分前に分からなくなっていた

ただ一つ確かなのは

この距離は途方もなく広大だってこと

 

どうすれば目印の火になれたのか

二人は宇宙のどこからも見えない場所に

お互いに隠れて

それも忘れて

凍えながら

日が当たらないのを嘆いてる

 

どこから来てどこに行くのか

すべての声は語らない

音の前には何もなかった

 

彼は窓の外

地平線のずっと先 

その行き止まりに目を凝らす

 

想像できないから

そこには初めから誰もいなかった

反対側にいるはずの自分さえ

初めからいなかった

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2017.12.3