何処かにあった灯

朝早く起きて藤の花を見に行った。

 

藤棚は遠くへ行けば行くほど

花びらと房の境界線が薄くなって

ぼんやりと

薄紫の光が滴っているように見えた。

 

あの灯りは独特で多分忘れないと思う。

 

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その後に

すぐ近くに少し前まであった祖母の家、

取り壊された跡地に住宅が四軒建っている場所

を初めて訪れた。

 

祖母の家は昔ながらの民家で

酒屋を営んでて土間と二つの大きな蔵、

それから上り口にかけてあった曽祖父の刀と

柿や桑の木と、シロやロッキーたちがいた庭

 

いろんなこと思い出しながら

車を走らせたんだけど

 

ああ なんと

 

本当に跡形もなく。

ずっと昔からそこにあったみたいに

家は四軒建っていた。

 

裏のメダカがいた用水路も

全部埋め立ててあって

 

屋根の上に登って従兄弟達と見た花火とか

今でも夢に見る

幽霊がいる二階の薄暗い部屋とか全部

 

そう、まあ記憶の中だけに残された世界になってた。

 

そこに何か感情は

あんまり伴わなかったような気もする。

 

ただそうやって時間は経って

 

いろんなものは、

必要とされなくなったもの

古くなったりしたものは

新しいものに入れ替わって

当たり前にそばにあったもの、

だんだん自分の身の回りのものや人も

今後生きていく上で

記憶だけの世界の部分が

多くなるんだなって思ってた。

 

 

記憶だけの世界が作られていくスピードか

物質の伴った

現実の世界が再構築されていくスピードか

どっちが早いだろう?

心はいつも追いついていけるのかな、

 

でも 多分

どちらも本当で、本当だった事には

間違いないよな

 

失ったものの失った事実を

行ったり来たりするより

無数の奥行きのある記憶と、

それから今この瞬間を同じように感じて

どれも紛れも無い

自分の世界の一部だから大丈夫だと

ちゃんとあるがままを受け入れたい

 

そうできるようになれたら。

 

 

 

平成が終わりました。

ありがとう

それからこんにちは

令和

 

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