「精神の声」

なんでこれは撮られたんだろう。

 

ソ連崩壊後、

独立したタジキスタンでの内戦に派兵された

モスクワ国境警備隊第十一駐屯地の兵士たちに

ソクーロフ監督が同行しまとめた映像集。

 

これはドキュメンタリーだろうか…?

 

 

ドキュメンタリーは

ノンフィクションだけど

それをフィクションのように

構成するものだと思ってた

監督の視点、伝えたいことから

物語の流れをつくり、そこに事実を沿わせ

あるはずのない結論を導くものなんだと。

だから僕はエンドクレジットの後

用意されていた結論にほっとして

そこに収まって 

「なるほどね、」

と少し分かった気にだってなれる。

彼の作品はそうじゃなかった

 

登場する人たちに名前はない

戦っている相手は出てこない

個人や軍事状況

政治的背景を掘り下げたりはしない

 

ならば何を撮っているのか

 

もっと表面的なもの?

あるいは見ることのできないもの、

 

 

目には映らないもの。

 

…そうか

つまり題名の通りっていうわけなんだ

Spiritual Voices

 

彼は映画の形をとったけど

彼自身が伝えたいことは隠されたのか。

むしろ自我はナレーションを除いて

あの画面上には殆ど存在してないように見えた

(いくつかの暗示、象徴的な場面を自分がちゃんと理解していないだけかもしれない。)

 

彼は、

兵士としてあの場にいた人々の声が

聴きたかっただけ

それがどんな声なのか

その声が何を言ったのかは

聞いた人が探す。自分と、彼らの内側を。

つまりこのドキュメンタリーに

従来の、またこれからの作品のような

結論、回答は用意されていない  

 

僕は

切り取られた声を聞き

そしてそれを聴くことができるだろうか

 

どうかな

 

もしそれができるなら

 

もういない彼らが

乾燥した荒地の向こう

もう一度

ゆっくりとこちらを振り返る

それを見られるのだろうか

 

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追記

ソ連のアフガン侵攻の写真でもそうだった

公開されているのは

みんなだいたい揃いの軍服を着てたし

規律はあるように見えた

 

いくらか普通の表情をしてたと思った。

 

軍事関係の動画サイトにあった

現地の若いソ連兵士達がソ連侵攻は無意味だとインタビューに答えてる当時の映像を観た時

彼らの顔、目、声

つくられた情報と現実は少し違うんじゃないかって

やっとほんの僅か気づいた

 

タジキスタン内戦の写真は

あまり見つからなかったけど

この映画に映ってる実際の彼らも

堂々と開示されてるものとは

きっと違うんだと思う

 

感情鈍麻

無気力感

無関心

そしてそのもっと奥にあるものは?

 

 

 

NATOならとっくの昔に自殺してる」

   印象的な表現だ。

 

 

目的も、帰還できるかも、明日生きているかもすべて不明瞭な場所で心身はすり減って

戦闘や厳しい環境で倒れ、

結果として本当に多くの青年達が死んだそう

この映画で撮られた

第11駐屯地の兵士達も。

 

同じように

一つの部隊に同行してつくられた

「レストレポ前哨基地」

(アフガニスタンでの

アメリカ軍兵士を撮ったもの)

という作品があったけど

こんなにも違うんだな…って思う。

レストレポは僕の知っている形をした

ドキュメンタリー。好きだった。

 

だけど、今後ずっと思い出して

今感じてる

こんな言い表せない気持ちになるのは

「精神の声」なんだと思う。

 

みんな何かを押し殺していた

口は固く閉ざしているが

大気は叫び声で震えてる

それが心臓まで揺らして

苦しくなって何度か中断した

 

ずっと分からないのだろうか

 

 

サファールは泣いたんだ

新年の日に。

 

 

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昨日の夜観終わって

描かずにはいられなくなって衝動的に

彼らをスケッチしました。

忘れられない言葉と、疑問と一緒に。

ブログに書いためちゃくちゃな文章よりも、

一人ずつ描きながら込めた気持ちが

たぶん

本当の気持ちに近いんだと思います。

言葉にはとてもならないものだったから。

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この作品は観たくて、

でも無理だと諦めかけてた時

いつも声をかけてくれる方が

観せて下さった。

SNSを始めてこの方に知り合ってなかったら

多分今これほどまでに映画を好きにはなっていなかったし

知りたいことがこんなにも増えていなかった。

今立っているところ

今やりたい事も少なからず違った

本当に影響を与えてくださる方々に感謝と

それを活かしたいと心から思います。

 

おわり