光のノスタルジア

ー2015.10.29

 

 

「光のノスタルジア

公開されるのをずっと待ってた。

本当に観てよかった。

 

チリのアタカマ砂漠で天体観測をする天文学者達。

 

その砂漠地帯は昔、

ピノチェト軍事政権下に 政治犯として虐殺された無数の人たちが埋められていた場所でもあった。


空を見上げ続ける天文学者たちと、

今も見つからない亡き遺族の骨を

砂漠の中で下を向き、砂を掘り起こし

途方も無く探し続ける女性達。


宇宙を探ることは、過去を探すこと。

 

光が地球に届き

私達が宇宙を見ることが出来るまで

何億光年とかかっているからだ。

それはもう燃え尽きてしまったかもしれない

過去の光


また、遺族の骨を探し続ける彼女達も

過去に止まってしまった時間を探している。


同じ過去であっても

それは対比させるべきではないのかもしれない


だけど宇宙の中

星の成分にはカルシウムが含まれているんだと言っていた。

体をつくる骨と同じ。

つまり私達の成分はビッグバンが起きた時に生まれたということになる。

 

宇宙の子供でもあったんだ。


何処から生まれて、そして何処に行くのか?


この、人間にとっての永遠の問いを考えた時、答えは宇宙にあるのだろうか。

本当の意味での

故郷だといえるのかもしれない。

 

遺族を探し続ける女性達が

天文学者の造った最大の天体望遠鏡を覗く場面があった。

映画上の演出かもしれないけど

それを見た時

失ってしまった大切な人を探すことは

星を見上げることでもあるのかなと感じた。


これを希望と呼ぶには、壮絶な時代とそれを経験した人を思えば簡単じゃない。


…だけど、彼女達はあの砂漠の中、いまも星を見ているのだろうか。


宇宙を探すと

この地球での出来事なんて取るに足らないのかもしれない。

だけど宇宙が

そうは思えないように微調整を重ねて私達を作った。

今をどうしたって必死に

重要に、大切に生きることができるように。

だとしたら、苦しんだり悲しんだり、心があらゆる方向に動き続けるのを出来るだけ止めずに見守っていたい。

全部が終わったらまた

帰ればいいんだと思った。

自分達が来た場所に。

 

それらを実行する権利を他人が奪ったり

侵害し続け合ってる現状があるのも事実だけど。

 

最後の最後に。


誰かを想って空を見るという行為がすごく腑に落ちた。

あの広大で途方もない空間には生命の終わりと、始まりと

地上から去った大切な人の欠片がひろがって輝いている。

そう感じさせるほどの

とめどない流れの中、数々の不思議と

奇跡をもった宇宙に感謝したいと思う。

 


そしてそれを見せてくれたこの映画に。

 


2015.11.22

追記 2002年からアタカマ砂漠に建設され、2014年に完成した66台の大型電波干渉計(アンテナ)は略称ALMAと呼ばれている。

 


ALMAスペイン語で「魂」、「愛しい人」を意味するんだって。

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