1994年大晦日

31日、大晦日の夜に

絵を描いてたら目が疲れきって

瞬きするのも辛くなったから

みんなに

30分くらい横になってるね

来年もよろしくお願いします

そう言って部屋に戻った

 

目が覚めたら深夜の1時を回ってて

僕はもう2018年にいたんだ

 

カウントダウン出来なかったな〜

そんなことを考えながら

 

それを上回るくらい

幸せだなって布団の中で思ってた。

 

横になる前に気になってた

スコットランドのことわざを

インターネットで調べようとパソコンを開いたら

ある動画が目にとまった

 

ホームビデオだと思う

 

クリスマスに着るようなカラフルなセーター

少し薄暗くてオレンジの灯りの中

椅子に腰掛けた

同い年くらいの男の人が笑顔でカメラに

何か話してる

ロシア語だから分からない

 

ビデオカメラの左端に日付と時刻が表示される

1994.12.31 20:52

男の人はまだ話してる

 

彼は腕時計を見る

声が弾んでる

多分、新年を迎えることを話してるんだと思う

 

楽しそうな表情の

ずっと奥に

何かを恐れているような

何か別のことを考えてるような

 

それが少しだけ異様で恐ろしい

 

ふと

銃声が響く

すぐあとに爆発音

 

彼は話し続ける

笑顔は変わらない

 

また銃声

 

映像が切り替わる

 

左端の日付は

1994.12.31 23:48

 

屋外

爆発の閃光

 

 

1994年の、大晦日に撮影された

このビデオが何を意味してるのか

本当に無知だった

 

Battle of Grozny

 

あの男の人は

新しく始まる年と

新年にあがる花火について

撮影してる友達と

落ち着いて冗談を言ってるんだと

 

だけど

二人とも戦争が始まったことを知っている

 これから自分たちに

恐ろしいことが起こるんだと知っている

それでどうすることもできないと知っている

 

結局あの大晦日から

35000人の一般人が殺されたって

 

 

 

僕は今新年をなんの不安もなく迎えた

大晦日は幸せだった

 

なんか

なんて言ったらいいか

 

そういうことがあって

 

 

どうしてあのホームビデオに

今日僕は会ったんだろうか

 

 f:id:ellesky28109:20180101150523j:image

 

 

 

 

 

参考にさせていただいたもの

HP:http://www.y-history.net/appendix/wh1703-098.html

https://en.m.wikipedia.org/wiki/Battle_of_Grozny_(1994–95)

本(これから読むもの):

林 克明 著

チェチェンで何が起こっているのか
アンナ・ポリトコフスカヤ
チェチェン やめられない戦争

(photo by @war.on.the.ruins.of.the.ussr)