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台風が通過してる

 

 

小さい時

土砂降りの夜、

 

当時宝物だった

恐竜と魚の図鑑、地図

懐中電灯、お菓子

そういうのを全部

筏にみたてたベッドに持ち込んでた

 

体の一部がベッドからはみ出ないように

布団と一緒になるべく小さく丸まって

 

目を閉じて

 

筏が浮くのを待ってた

 

シャッターを叩く雨は

まるで海の上で帆を叩きつける音みたいで

 

なんでか

船乗りみたいな気分だったと思う

 

僕は本当に

一人ぼっちで土砂降りに

生身のまま打たれたり

水かさの増した雨に

押し流されたことはない

災害に本当の意味で

直面したことはない

 

だから

未だに

こんな台風の日は

シャッターを叩く雨を聞いて

真っ暗な部屋で

あの幸せな

能天気な筏を思い出してる

 

だけど

今この瞬間に

恐ろしくて震えたり

屋根のないどこかで  

暗い夜のなか

この風や雨に生身のまま打たれて

それが

過ぎ去るのをまってる人は

きっといるな

 

水のない

風のない場所で

動かない筏に乗ってた

幸せな子供は

 

そこから降りて

もっと

想像しなくちゃいけない

想像して

あれがどういうことだったのか

もう知らなくちゃいけない