大切な身代わり

この本は僕の一部を書いてるみたい、この映画は、この歌は僕の感覚をうたってるみたい。

 

誰かの作った色やメロディー、一瞬のスライド、そこに勝手に自分を見いだしたとき

多分それ好きになるんだと思う

 

誰かが、

その本の、その映画の、その歌の

誰かが僕の身代わりになって

荷物を全部背負ってくれる

 

その世界が現れて

だんだんボリュームが小さくなって

消えてしまうまでは

 

そのあいだ僕は

ベッドに寝転がって

自分の輪郭が無くなってくのを感じてる

自分自身についての

いくつかの責任を

誰かが作った身代わりの僕に全部預ける

僕は消えた

 

だけど

静かになって

ちょっと目を開けたら

また向こうから自分がやってきて

少し申し訳なさそうに

また僕になって

輪郭をつくって

 

また次に身代わりに会えるまで

道を選んで

責任の荷物を背負って

物語の続きを生きなくちゃいけない